Broken Hearted Womanを覚えていますか?

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自分が初めてタイを訪れたのは学生になったばかりの1994年。今からちょうど20年前。この時、タイで大ヒットしていたのがタイトルの「Broken Hearted Woman」という曲です。

タイの田舎町に着き、適当な安宿を見つけザックを置きふらりと出かけると、決まってどこからともなくこの曲が聞こえてくるほどで、その人気ぶりは単に大ヒットというだけでは生易しく感じるほどの凄まじいものでした。

レゲエ調のリズムにダンスビートを乗せたメロディーと、Jessica Jayという聞いたこともない女性歌手の甲高い歌声は、その旅行中ずっと耳から離れることはなく、自分自身もいつしかカセットテープを購入するほどのお気に入りに(当時タイではまだカセットテープが全盛でした)。

それが、中島みゆきがちあきなおみに提供した「ルージュ」という曲のカバーだと知ったのは帰国してからずいぶんたってからの話で、なんだ日本の歌だったのか、と結構驚いた記憶があります。

あれから20年、その後もほぼ毎年のようにタイを訪れていますが、現在でもこれを超えてタイ人があれほどまでに夢中になった曲というのを知りません。

調べてみると、香港で1992年にフェイ・ウォン(王菲)がアルバム「Coming Home」を出し、その中の一曲「容易受傷的女人」が大ヒット。これがまさに「ルージュ」のカバーで、その後北京語バージョンなども出て中国大陸にも広まっていったようです。

Jessica Jayがこの曲をアップテンポにリメイクし、「Broken Hearted Woman」というタイトルを付けリリースしたのは翌1993年。これをきっかけに、タイをはじめ東南アジアでも一気に流行していくことに。英語タイトルもフェイ・ウォンのカバーが基になっているのは間違いないでしょう。

数年後、Jessica Jayは「Chilly Cha Cha」というチャチャチャをベースにしたダンス曲を発売し、やはり東南アジアを中心にスマッシュヒットを飛ばすことになります。

しかし、このJessica Jay(ジェシカ・ジェイ)というアーティスト、正体不明の謎の存在で、フィリピン人のステージ歌手だとか、欧米系シンガポール人だとか、いやいやスウェーデンの何々というグループの誰々だとか、インターネットで検索してもこれという答えが見つかりません。

「ジェシカ・ジェイっていったい誰だ?」という記事を書いている人もいるくらいで、それによると、イタリア人歌手Dora Carofiglioがまさにその人で、ジェシカ・ジェイというのは彼女のコンセプトネームだというものです。

正直自分には真偽のほどはわかりません。

ただ、歌っているのが誰であれ、この曲を聴くだびに、あのタイ全土を覆いつくしていたBroken Hearted Womanフィーバーの濃厚な空気と、自分がはじめて東南アジアを旅した時の思い出が蘇ってきてなんとも言えず懐かしい気持ちになります。

その後タイ人をはじめ多くのアーティストがカバー作品を発表しているようですが、自分にとって「Broken Hearted Woman」は思い入れのあるJessica Jayバージョンこそが唯一無二の存在です。

今でも東南アジアを旅行していると、ふとした時にこの曲に出会うことがあります。先日もベトナム・ハノイのホアンキエム湖近くを歩いていると、あのメロディーと歌声がみやげ物屋の店先から聞こえてきて、しばらくその場を動くことができませんでした。