タイ南部ナコーンシータマラート県にナーボーン(Na Bon, นาบอน)という小さな町があります。
タイ国鉄ナーボーン駅前に広がる集落は今から100年ほど前に福州からの移民が住みついた場所で、今なお独特な雰囲気を残しています。
現在の福州は中国・福建省の省都。彼らは中国から南タイに直接やってきたわけではなく、まずはマレーシア・ペラ州のシティアワンに移住し、主に胡椒畑やゴム農園で労働。後にその集団の一部が北上し、紆余曲折を経て辿り着いたのがこの地だったとのこと。
いわゆる「再移民」たちが拓いた町で、今でもタイ南部のゴム農園の多くは福州華人が経営。
そういった歴史もあり、この地の名物は福州由来のパンや麺料理。パンはカノム・ペ・オン(ขนมแปะโอ่ง)と呼ばれ、練った小麦粉を窯で焼き上げたシンプルなもの。
中国で一般に焼餅(シャオビン)と呼ばれるものの一種ですが、中央に穴が開いているのが特徴。これはかつて紐を通して売っていた頃の名残とのこと。
タイ国鉄ナーボーン駅前に広がる集落は今から100年ほど前に福州華人が住みついた場所で今なお独特な雰囲気
名物は福州由来のパンや麺料理。パンはペ・オンと呼ばれ、練った小麦粉を壁に貼り付け焼き上げたシンプルなもの。中央には穴が開いているのが特徴。これは紐を通して売っていた頃の名残。→ pic.twitter.com/bxdUhGitNR
— アジアトラベルノート (@asiatravelnote) April 27, 2024
発祥の福州では「福州光餅」と呼ばれているそうで、以下の動画を見ると全く同じものですね。
カノム・ペ・オンは甘いタイプとしょっぱいタイプの2種類があり、どちらも一つ4バーツ(約17円)。現在ナーボーンでこのパンを作っているのはチュンサンタイ(陳三泰, เฉินซังไท่)という店1軒だけになっています。
麺料理ではパット・ミー・ナーボーン(ผัดหมี่นาบอน, 福州炒面)、ミースア・ホックチウ(หมี่ซั่วฮกจิ้ว, 红糟鸡面线)、ミー・デーン・ナーボーン(หมี่แดงนาบอน)などが有名。ナーボーン中心部には食堂やレストランが数軒あり、これら料理を扱っています。
個人的なおすすめはミー・デーン・ナーボーン。自家製麺を使った汁なし麵は絶品でした。
場所は以下。
駅前には福建華人が経営する雰囲気の良い老舗カフェもありました。店名はゴーチン(โกฉิ้ง, 雷贤清)。
創業80年以上とのこと。コピ(コーヒー)やタイティーは1杯20バーツ(約84円)と良心的な値段。
サラパオ(肉まん)やパートンコーなども扱っていました。今回、街中を散策する間は気のいいオーナーに荷物を預かってもらいました。
中心部には福華宮という立派な廟や那汶華僑功徳堂と書かれた建物があり、郊外には中国式の大きな墓地も。「那汶」というのがナーボーンの漢字表記。
街の東側、遠くに見えるのはメン山(เขาเหมน)。地元では「タイの富士山」とも呼ばれ親しまれているとのこと。
タイ国鉄ナーボーン駅は1日あたり上下合わせて10本の列車が停車。
この時は列車でさらに南下し、トランへ向かいました。
タイでは珍しい福州華人が暮らす街、ナーボーン。時間のある方は南部旅のついでに立ち寄ってみてはいかがでしょうか?