サッカーの西野監督とタイ人のニックネーム

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現在、タイのバンコクで開催中のサッカー・アジアU-23選手権。

タイサッカー協会公式サイトより
タイサッカー協会公式サイトより

西野朗監督が率いる地元タイは史上初めてグループリーグを突破。日増しに監督の手腕・評価も高まっているようですが、タイのメディアやSNSを見ているといつからか監督をルン・ノ(ลุงโน๊ะ, ลุงโนะ)という愛称で表記するのが一般的になっています。

ルン(グ)というのは「おじさん」の意味で、ある程度年を取った人に付ける敬称。「ノ」は「西野」の最後の一文字を取ったもので合わせてルン・ノ。日本語にすれば「の・おじさん」という感じでしょうか。



タイ人は本名のほかに皆ニックネーム(チュー・レン)を持っていて、友達であろうと上司や部下であろうとニックネームで呼び合うのが慣習となっています。

本名はサンスクリットやパーリ語といったインド古語から由来した単語を組み合わせた長く複雑なものが多いのに対し、ニックネームは、ノック(nok, 鳥)、ファー(faa, 空)、バン(bank, 銀行)といった感じでシンプルな短音節(子音+母音、子音+母音+子音など)の言葉がほとんど。

オリジナルのタイ語はカジュアルで親しみを感じるのに対し、サンスクリットやパーリ語は高貴なイメージを与えるようで、例えば、「犬」は一般的なタイ語ではマー(หมา)ですが、インド古語由来のスナック(สุนัข)という言葉もありこちらは「お犬様」という感じ。「お母さん」も通常はメー(แม่)ですがマンダー(มารดา)という単語もあって「お母様」。オリジナルのタイ語は短音節、サンスクリット・パーリ語由来の単語は複音節というのが特徴です。

西野監督の場合はni+shi+noで3音節。ニックネームで使うのには長すぎるので最後のnoだけ取ってルン・ノになったのでしょう。

そう言えば、Jリーグのコンサドーレ札幌にはタイ人のチャナティップ選手が所属していますが、彼の本名はチャナティップ・ソングラシン(ชนาธิป สรงกระสินธ์)。日本では名前を略して「チャナ」と呼ばれることが多いものの、本当のニックネームは短音節のジェイ(Jay, เจ)。チャナ(cha+na)だと2音節なのでタイ語のニックネームとしてはこれでもちょっと長いかなと感じます。

タイ代表が決勝トーナメント初戦で対戦するのはサウジアラビア。こちらも長い国名なのでタイではやっぱりというかニックネームならぬ省略形が定着していて、サウ(ซาอุฯ)と短音節で呼称・表記するのが一般的です。