苦戦する東南アジアの中長距離LCC

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航空業界に関する研究機関CAPA(Centre for Aviation)が、2015年第3四半期における東南アジアの航空会社各社の業績を分析・レポートしています。

それによると、業績発表済みの主要20社のうち利益トップはエアアジア。次いでシンガポール航空、バンコクエアウェイズという順。反対に、業績が悪かったのは断トツでタイ国際航空で約7,900万ドルの赤字。以下、エアアジア・フィリピン、タイ・エアアジアXなどが1,000万ドル以上のマイナスとなっています。

全体で見ると9社が黒字、11社が赤字という結果。原油価格の下落という恩恵もあって、昨年同期もよりも改善されていますが、その中で不振が目立つのが中長距離LCCです。

エアアジアX、タイ・エアアジアX、インドネシア・エアアジアX、ノックスクート、スクートという中長距離LCC5社は全てが赤字。前3つはエアアジアグループですが、短距離LCCのエアアジア(AK)が約7,800万ドルの黒字だったのとは対照的な結果となっています。

(タイ・エアアジアXのエアバスA330型機。 Photo by Alec Wilson

1月~9月までの9か月間の合計をみても同様で、5社全てが赤字を計上。

タイ・エアアジアXやノックスクートなどは国際民間航空機関(ICAO)がタイ航空当局に対して「重大な安全上の懸念(SSC)」を指定したことで、日本や韓国への就航計画が狂ったことも当然影響しているでしょうが、前述のように今年は年初より原油価格が低水準で推移し、航空会社にとっては利益を上げやすい環境だった事を考えると、中長距離LCCが苦戦している様子が伺えます。

(セブパシフィック航空もエアバスA330を用いてマニラ~中東間などの中長距離路線を運航していますが、運航本数・路線数ともに短距離が占める割合が圧倒的に多いため、中長距離LCCとはみなしていません)

各空港での滞在時間をできるだけ短くし、座席数を増やし、機内食や受託手荷物を有料にする、などというのが一般的な格安航空会社のビジネスモデルです。

これらが短時間での移動に向いたものであることは明らかで、中長距離路線では空港の運用時間制限の問題や時差などからも効率的な運航ができにくく、LCCの優位性を生かしにくいということは以前から指摘されていました。

現在、航空業界全体に占めるLCCのシェアは、ヨーロッパや北米では3~4割、東南アジアでは5割にも達しています。

関連リンク国土交通省 航空局 我が国のLCCの現状と課題 (PDF)

各地域共に国内線を中心とした短距離路線がこの数字に寄与していて、実際、アメリカ最大手LCCのサウスウエスト航空は飛行時間1時間程度の路線をメインにしていますし、欧州最大のLCCライアンエアーは、長距離路線へ参入するとずいぶん前から言及はしていますが、未だに実現していません。

こう見てくると、東南アジアに限らず「中長距離」専業でやっていくのはなかなか難しく、エアアジアグループのように短距離LCCと中長距離LCCを両方持ち、クアラルンプールやバンコク(ドンムアン)といったハブ空港での乗り継ぎ需要を取り込むことで総体で考えればプラスに持っていく、というのが唯一の現実的な戦略といえるような気もします。

そういう意味では、ノックスクート、スクート、ノックエアの陣営は現状乗り継ぎ可能な路線・便数が少なく、収益面でもいずれも赤字と、連携が必ずしもうまくいっているとはいえない状態ですね。

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