タイ語の日本語表記についての難しさ トムヤムクンとカオマンガイを例に

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日本でもポピュラーなタイ料理の代表としてよく挙げられるのがトムヤムクンとカオマンガイ。

トムヤムクンはエビの入った辛くて酸っぱいスープ料理。一方のカオマンガイは茹でたりローストした鶏肉をご飯と一緒に食す料理です。

トムヤムクン
トムヤムクン

トムヤムクン(ต้มยำกุ้ง)のクンは「エビ」のこと。日本語では濁らずにクンと表記するのが通例。

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一方で、カオマンガイ(ข้าวมันไก่)のガイとは「鶏」の意。日本語では通常は濁音でガイと表記します。

Google検索結果: カオマンガイ1,130,000件、カオマンカイ4,070件

エビと鶏、タイ語ではどちらも同じกという文字を使っているのですが、日本語では前者は清音で後者は濁音でと表記の揺れが生じています。

カオマンガイ
カオマンガイ

日本人は有声か無声かの違いには非常に敏感ですが、反対に有気・無気の違いについては意識的には区別をしていません。一般に日本人が「クン」と発音すると息が漏れる、つまり有気音になりやすい傾向があり、「グン」と発音すれば自然と無気音になります。タイ語のกは無気音のため、トムヤムクンよりもトムヤムグンと表記する方が理にかなっているとも言えると思います。



タイ語では有気音か無気音で全く違う意味の単語になってしまうため、タイ語をマスターするためには非常に重要なポイントです。練習でよく用いられるのが口の前にティッシュペーパーを持って行き発声してみるという方法。ティッシュが揺れなければ無気音、揺れると有気音ということになります。

これについては「バンコク在住ダイさんのチャンネル」さんが以下の動画で詳しく解説されています。

ただそれらを分かった上でもなお、個人的には日本独自の呼び方があっても別に良いのではないかなと感じています。表記の揺れはあったとしてもต้มยำกุ้งはトムヤムクンで、ข้าวมันไก่はカオマンガイでいいのではないかと。そもそも外国語の固有名詞をカタカナ表記する場合、一旦ある表現方法が定着するとそれを後から変えるというのは非常に難しいですよね。

反対に、タイ語は中国語や韓国語と同様に清濁(無声音・有声音)の区別をしません。そのため、スズキをซูซูกิ(ススキ、スースーキ)と表記・発音しても全く問題ないということになります。スズキとススキって日本人にとっては別の音なのでそれをタイ人に指摘すると、「でも日本人ってkとkhの区別をしていないよね」などという指摘を逆に受けることになるのです(笑)。

タイ語の日本語表記については短母音・長母音に関してもあいまいな点が多いのですがそれはまた別の機会に。