バンコク、剣獅のある風景

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「剣獅」(劍獅)とはその名の通り、剣を咬んだ獅子をモチーフにした魔除けのことで「獅咬劍」とも。台湾・台南の安平地区に数多く残っていることで知られていますが、実はタイでも中華系住民の多いエリアであれば至る所で見られるポピュラーな魔除けの一つです。

タイではシンカープダープ(สิงห์คาบดาบ)と呼称
タイではシン・カープ・ダープ(สิงห์คาบดาบ)と呼称

風水の考えではT字路や尖った建物は直進してくる悪い「気」がぶつかる場所であり、これを跳ね返す目的で設置するのが剣獅ということになります。沖縄などで見られる石敢當と同じ役目のもので、やはり元々は福建南部が発祥の風習のようです。

バンコクの路地。T字路の突き当りで睨みを利かせる剣獅
バンコクの路地。T字路の突き当りで睨みを利かせる剣獅
近くから見るとすごい迫力
近くから見るとすごい迫力
ここでは左右に設置。さらに凸面鏡も
ここでは左右に設置。さらに凸面鏡も
上に鏡、下に剣獅という組み合わせ
上に鏡、下に剣獅という組み合わせ

タイではこの剣獅と一緒に、太極八卦図、泰山石敢當や百事無忌などの文字が一まとめになった風水鏡もよく見かけます。

御札と風水鏡
御札と風水鏡
太極正照、百事無忌、泰山石敢當の文字
太極正照、百事無忌、泰山石敢當の文字
上下にダブル剣獅
上下にダブル剣獅
古びたショップハウスの壁にも
古びたショップハウスの壁にも
鏡、剣獅に加え、泰山北斗を意味する「山斗」の文字
鏡、剣獅に加え、泰山北斗を意味する「山斗」の文字
御札、凸面鏡、剣獅、太極八卦図などを並べ、厄災は絶対に入れないという強い意志
御札、凸面鏡、剣獅、太極八卦図などを並べ、厄災は絶対に入れないという強い意志
ライオンの看板と共演
ライオンの看板と共演
グラフィティと一緒に
グラフィティと一緒に
スクンビットエリアのレジデンスにも(Hの文字の下)
スクンビットエリアのレジデンスにも(Hの文字の下)
マッサージ屋にだって(店看板の左側)
マッサージ屋にだって(店看板の左側)

このようにタイにおいては剣獅は中華系住民の間で現在でも一般的に行われている風習で、そのため、バンコクのヤワラー周辺では剣獅や剣獅の入った風水鏡を売っている店をよく見かけます。

チャルンクルン通りにて
チャルンクルン通りにて
実際に購入。80バーツ也
実際に購入。80バーツ(約300円)也

福建の剣獅について詳しい以下サイトによると潮州や汕頭でも同様の剣獅は見られるとのことで、潮州華人が多いタイで広まったというのも理解できます。

福建劍獅考(一):福建劍獅的種類與分布

また、タイと同じく潮州系がメジャーなカンボジアのプノンペンでも剣獅を飾っている商店や家を見たことがあるので、東南アジアで暮らす潮州人の間では広く受け入れられている風習なのではないかと思います。