アジアの麺料理、第6回目となる今回はタイ・チェンマイで食べたカオソーイです。
いわゆるカレーヌードルの一種で、我々日本人の味覚にも良く合う人気の高い麺料理ですね。
使用する麺は小麦粉に卵を混ぜた卵麺。さらにそれを揚げた物をトッピングするというのが一般的なスタイル。スープはカレーペーストにココナッツミルクを加えたもので、食感の異なる2種類の麺と濃厚なスープが特徴となっています。
チェンマイでは上記写真のように、酢漬けキャベツ、エシャロット、マナオ(ライムの一種)の3種類が別皿で供されるのが普通で、味にアクセントを加えることできます。
このカオソーイはタイ北部に住む中国系ムスリム、チンホー(チンは中国の意)が伝えた麺料理ということで、かつてはクイティアオ・ホー(ก๋วยเตี๋ยวฮ่อ)とも呼称されていたそうです。
チンホーの祖先は、19世紀半ばに雲南地方で発生した「パンゼーの乱」から逃れるため国境を越えた人々と言われ、彼らはやがてビルマ、ラオス、タイに定住していきます。そのため、現在でもこの3カ国では起源を同じくする、ほぼ同じ名称の麺料理が残っています。
ミャンマーではオンノ・カウスエと呼ばれ、麺・スープ共にタイのカオソーイとの共通点が多く見られます。
一方、ラオスでカオソーイと呼ばれるものは、ココナッツミルクとカレーペーストを使用しない透明なスープで、麺も米粉から作った幅広のいわゆるセンヤイが使われるなど、その様相はかなり異なっています。
ラオスのカオソーイ (Photo by Takeaway)
元々が雲南で食べられていた麺料理であるということを考えれば、南方系のココナッツミルクやスパイス類が使われていたとは考えられず、ラオスのカオソーイのほうが、よりオリジナルの形に近いというのは明らかですね。
ミャンマーでも雲南省に隣接するシャン州ではカウスエと言えば、ラオスのカオソーイのようにクリアスープのものが一般的です。ココナッツミルクやカレーペーストを使うというのはミャンマー中部やタイに入ってからアレンジされたもので、より歴史の浅いものでしょうね。
カオ(ข้าว)は米、ソーイ(ซอย)は細く切る、という意味ですが、米粉ではなく小麦原料の麺を使うというのもおかしな話で、これは米粉麺を使用しているラオス北部やシャン地域から伝わった名称だと思います。
このコーナーで何度かお伝えしているように、東南アジアの麺料理の大部分は華南地域の中国人が海路で伝えたものですが、このカオソーイに関しては雲南周辺のイスラム華人により陸路で伝播したということで、かなり出自の異なる特殊なものだと言えます。
第2回で取り上げたマレーシアのカリーミーもカオソーイと同様に「カレーヌードル」と呼べるような麺料理でしたが、その成り立ちには大きな違いがありますね。
データ
料理名: カオソーイ (Khao Soi)
場所: タイ・チェンマイ
麺の原料: 小麦粉
麺の種類: 切り麺系列
具: 鶏肉、牛肉が一般的。近年では豚肉も。
店名: 下記3店
・カオソーイ・ラムドゥアン・ファーハーム (Khao Soi Lamduan Faaham)
・フアンペン (Huen Phen)
・カオソーイハウス (Khao Soi House)