久しぶりの「アジアの麺料理」。12回目となる今回はインドネシアのイーフーミー(Yi Fu Mie)を紹介します。
鶏卵を練り込んだ小麦粉の麺を揚げ、そこに具入りあんかけをかけた料理で、他の多くの麺料理と同様に福建や広東など中国・華南地域からの移民によって伝えられたものです。中国では伊麵(イーミェン)または伊府麵と呼ばれていて、これがイーフーミーの語源となったようです。
時間の経過とともにあんが麺にしみ込み、徐々に柔らかくなっていく食感がたまらない。
麺料理研究の大家、石毛直道氏の分類に従うと(参照:製麺法による分類)、切り麺系列に該当。
インドネシアだけではなく、華人が移住したアジア各地では同様の料理が広まっていて、例えば、マレーシアやシンガポールではイー・ミー(Yee Mee)、タイではミー・クロープ・ラート・ナーと呼ばれ親しまれています。
日本では長崎に「皿うどん」がありますが、調べてみると、皿うどん発祥の店と言われる四海樓の創業者は伊麵の本場、福建省福州出身ということで、やはりこちらも中国の伊麵がオリジナルとなっているのでしょう。
東南アジアでポピュラーな米粉の麺は加工時に既に加熱処理されているため、店頭ではサッと湯がくだけで食べることができます。一方、小麦粉ベースの麺は生麺タイプのものがほとんどで、麺をゆでるのに時間がかかるのが難点。このイーフーミーのように麺を事前に油で揚げておけば調理時間は短くなり、また保存がきくという利点を得ることができます。中国や香港などではお湯で戻してから食しますが、東南アジアではぱりぱりな状態で提供されるのが一般的ですね。
今回食べたのは地元大手チェーンのバッミーGM(Bakmi GM)。
バッミー(Bakmi)を漢字で書けば「肉麵」。タイのバミー(บะหมี่)と同源。
清潔な店内。
メニュー。
メインのバッミーやバッソー以外にもナシアヤムやナシゴレンなどのご飯ものも。
地理的には中国から距離のあるインドネシアですが、古くから海路による交易が盛んに行なわれていて、今でも、チャプチャイ(cap cai, 雜菜)、バッソー(bakso, 肉酥)、バッピア(bakpia, 肉餅)など福建語由来の言葉がそのままインドネシア語として残っています。
ジョグジャカルタ名物のバッピア。
インドネシアでは例の9月30日事件以降、華人に対する風当たりが強くなり、華人文化禁止令が出るなど中国語の使用や教育が制限・禁止された時期がありました。それにもかかわらず、こういった料理・菓子は作り食べ続けられてきたわけで、食文化は強しという感がありますね。
データ
料理名: イーフーミー (Yi Fu Mie)
場所: インドネシア・ジャカルタ
麺の原料: 小麦粉
麺の種類: 切り麺系列
具: エビ、鶏肉、カリフラワー、芥藍など