日本に比べるとタクシー運賃のかなり安い東南アジアですが、では主要都市の中で一体どこが一番安いのか、また日本とどの程度差があるのか気になったので調べてみました。
今回対象としたのは、バンコク、クアラルンプール、シンガポール、ジャカルタ、ホーチミン、マニラの6都市。これに比較のため東京を加え、計7都市を調査。
カンボジア、ラオス、ミャンマーはまだメータータクシーが一般的ではないため除外。ハノイ、セブ、デンパサール(バリ島)あたりは普及していますが、それぞれホーチミン、マニラ、ジャカルタの運賃にほぼ置き換え可能なため省略しました。
タクシーの運賃体系というのは結構複雑で、初乗り運賃が適用される距離は都市によって違いますし、加算されていく運賃も基準となる距離はまちまち。さらに呼び出し料金や深夜割増料金があったりなかったりします。今回は簡単に比較ができるようできるだけシンプルに、日中、流しのタクシーに乗車したものと仮定します。
タクシー会社によって運賃が異なるケースも多いですが、それぞれの都市で人気が高いタクシー会社を選択。また、車種によって料金が異なる場合はなるべくノーマルなタイプのものを選びました。
具体的に言うと、シンガポールではコンフォート(車種:Hyundai sonata)、ホーチミンはマイリン(車種:Toyota Vios)、ジャカルタではブルーバードタクシーを選択。また、クアラルンプールではバジェットタイプを、マニラではレギュラータイプのタクシーを調査対象としています。バンコクのメータータクシーは会社・車種によらず一律です。
まずは現地通貨でそれぞれのタクシー運賃体系を確認。そのあとで日本円に換算し、どこが安くてどこが高いのか見ていこうと思います。
さらに、目的地までの距離を3パターン(5km、10km、30km)用意し、それぞれ渋滞有り無しのケースを想定した検証も行ないました。
各都市のタクシー運賃体系
都市名 | 運賃 |
---|---|
バンコク |
初乗り: THB35 (1km) 距離運賃: THB5.5/km 渋滞時運賃: THB2.0/分 |
クアラルンプール |
初乗り: MYR3.0 (1km) 距離運賃: MYR0.25/200m 渋滞時運賃: MYR0.25/36秒 |
シンガポール |
初乗り: SGD3.2 (1km) 距離運賃: SGD0.22/400m 渋滞時運賃: SGD0.22/45秒 |
ジャカルタ |
初乗り: IDR6,500 (1km) 距離運賃: IDR3,500/km 渋滞時運賃: IDR700/分 |
ホーチミン |
初乗り: VND11,000 (733m) 距離運賃: VND14,700/km 渋滞時運賃: VND3,000/4分 |
マニラ |
初乗り: PHP30 (500m) 距離運賃: PHP3.5/500m 渋滞時運賃: PHP3.5/90秒 |
東京 |
初乗り: JPY730 (2km) 距離運賃: JPY90/280m 渋滞時運賃: JPY90/105秒 |
(※距離運賃については各都市ともに10kmまでのものを表示。ホーチミンの渋滞時運賃は最初の5分間は無料、その後4分ごとに加算)
通貨や基準となる距離・時間が全く違うため、上の表ではまだどこが安いのかわかりにくいのですが、まず気づくのは東京のタクシーは初乗りの距離が長いという点。
東南アジアでは初乗り1キロが主流です。ただ、東京でも来年4月からは初乗り距離を現在の半分程度の1.059kmにするようで、早速来月から実証実験も始まるとのこと。
国土交通省 – 東京のタクシー初乗り運賃の引下げに係る実証実験について ~初乗り410円のタクシーを利用することができます。~
次に、上の表を日本円に換算してみます(2016年7月28日時点での為替レートを使用)。
日本円に換算すると?
都市名 | 運賃 |
---|---|
バンコク |
初乗り: 105円 (1km) 距離運賃: 16.5円/km 渋滞時運賃: 6.0円/分 |
クアラルンプール |
初乗り: 78円 (1km) 距離運賃: 6.5円/200m 渋滞時運賃: 6.5円/36秒 |
シンガポール |
初乗り: 248円 (1km) 距離運賃: 17.1円/400m 渋滞時運賃: 17.1円/45秒 |
ジャカルタ |
初乗り: 52円 (1km) 距離運賃: 27.9円/km 渋滞時運賃: 5.6円/分 |
ホーチミン |
初乗り: 52円 (733m) 距離運賃: 69円/km 渋滞時運賃: 14.2円/4分 |
マニラ |
初乗り: 67円 (500m) 距離運賃: 7.8円/500m 渋滞時運賃: 7.8円/90秒 |
東京 |
初乗り: 730円 (2km) 距離運賃: 90円/280m 渋滞時運賃: 90円/105秒 |
これでだいぶわかりやすくなりました。初乗り運賃が一番安いのはジャカルタとホーチミンの約52円。但し、ホーチミンは適用距離がやや短く、実質ジャカルタが最安値です。クアラルンプール(78円)やバンコク(106円)もかなり安めの設定。
東京のタクシーは初乗り運賃も高いことには高いのですが、東南アジアの都市との差は最大でも7倍程度(1km当たりに換算した場合)。シンガポールとは1.5倍程度の差でしかありません。
一方で、距離運賃のほうはダントツに高く、1kmあたりに直すと321円。今回調査した中で距離運賃が最も安かったマニラやバンコクは1km当たり16円前後なので、東京のタクシーはそれらの20倍ということになります。
その他にこの表で目立つのはホーチミンにおける距離運賃の高さです。1km当たり69円というのはシンガポールの1.5倍以上、マニラやバンコクの4倍以上という驚くべき数字。
ホーチミンのタクシーは初乗り運賃が安いため、市内中心部など2~3km程度の短距離移動には向いているものの、長距離の場合はメータータクシーを避けバスで移動するか、あるいは一般車両を使うGrabCarやuberXなどを選択するのが賢明だと思います。
関連記事: ホーチミンのタンソンニャット空港でタクシーより割安なGrabCarを利用してみました
これはホーチミンだけでなく、ハノイやダナンなどベトナム他都市にも共通して言えることですね。
TUOI TRE NEWS – Vietnam taxi fare highest in Southeast Asia: data
では、ここまでのデータを踏まえ、出発地から目的地までの距離を5km、10km、30kmとした場合の各都市における実際のタクシー運賃を見てみましょう。まずは渋滞無しのケースから。
目的地までの料金は?(渋滞無しの場合)
都市名 | 5km | 10km | ※30km |
---|---|---|---|
バンコク | 171円 | 254円 | 674円 |
クアラルンプール | 208円 | 371円 | 1,021円 |
シンガポール | 419円 | 641円 | 1,616円 |
ジャカルタ | 164円 | 303円 | 861円 |
ホーチミン | 328円 | 742円 | 1,836円 |
マニラ | 137円 | 215円 | 527円 |
東京 | 1,720円 | 3,340円 | 9,730円 |
(※10km以上では距離運賃の基準となる係数が異なってくる都市がありますが、上の表ではそれに基づき計算を行なっています)
目的地までの距離が5kmの場合、マニラが最も安く、次いでジャカルタ、バンコクという順。
10km以上になると距離運賃が大きく影響してきて、マニラに加えてバンコクの安さも目立つように。一方、距離運賃の高いホーチミンがシンガポールを追い抜き、東京以外では最も高額になります(今回の調査では考慮していませんが、実際にはシンガポールでは通過するエリア、時間帯、曜日などによって様々な追加料金が発生してくる点には注意)。
最後に、渋滞があるケースを計算してみます。渋滞時は車が完全に停車していたものと仮定し、停まっていた時間を目的地5kmの場合は10分、10kmの場合は20分、30kmの場合は30分としました。
渋滞していた場合、目的地までの料金は?
都市名 | 5km+10分 | 10km+20分 | 30km+30分 |
---|---|---|---|
バンコク | 231円 | 374円 | 854円 |
クアラルンプール | 319円 | 592円 | 1,346円 |
シンガポール | 658円 | 1,103円 | 2,300円 |
ジャカルタ | 220円 | 415円 | 1,029円 |
ホーチミン | 371円 | 813円 | 1,950円 |
マニラ | 192円 | 324円 | 683円 |
東京 | 2,260円 | 4,420円 | 11,350円 |
低速・渋滞時運賃が安いのはホーチミン、マニラ、ジャカルタ、バンコクで1分当たり3~6円程度。反対に、高いのはシンガポールで約23円。ただ、東京は1分当たりに換算すると約158円にもなることを考えれば、東南アジアでは渋滞時にメーターが上がるのをそれほど気にする必要はなさそうです。
先ほどの渋滞を考慮しないケースでは距離が長くなるとホーチミンがシンガポールより高くなりましたが、渋滞の程度によっては長距離でもシンガポールのほうが高くなることがあることも分かりました。
まとめ
総合すると、東南アジアでタクシー運賃が高いのはシンガポールとホーチミン(ハノイも同様)。安いのは距離が短ければジャカルタとマニラ、長距離であればマニラとバンコクという結果になりました。
各国の物価水準を考えるとシンガポールが高いのは納得できるのですが、ホーチミンは意外でしたね。
距離運賃が安い都市では長距離の乗客を乗せたとしてもメーター通りでは利益は少なく、これがマニラやバンコクにおけるぼったくりやメーター不使用の原因の一端にもなっている気がします。
なお、バンコクではタクシー運賃を5%値上げすることが既に決定していますが、今のところ実施時期については未定のようです。
Bangkok Post: learning – 5% taxi fare rise delayed again
以上、東南アジアでタクシーを利用する際の参考になれば幸いです。
参考サイト:
バンコク: Bangkok Post: learning – Taxi fares go up in Bangkok Saturday
クアラルンプール: SPAD – New Taxi Rates & Fares
シンガポール: Comfort Transportation – Rates & Charges
ジャカルタ: TEMPO.CO – Blue Bird, Express Taxi to Cut Fares Following Fuel Prices Drop
ホーチミン: Ho Chi Minh City Taxi Association – Công ty cổ phần Taxi Mai Linh
マニラ: Official Gazette – LTFRB approves nationwide taxi fare cuts