クメール文字(カンボジア文字)とタイ文字、両者で似ている文字をいくつかピックアップしてみました。上がクメール文字、下がタイ文字。
クメール文字の子音文字は廃字を除くと計33字。ここで挙げた12字以外にも造りをよく見れば類似しているものもいくつかあるため、子音文字の半分程度は対応関係が理解しやすいかなと思います。また、母音記号も共通するものが多いです。
タイ文字は古クメール文字を参考に作られたため両者が似ているというのは当然ですが、タイ文字とラオス文字ほどは類似点は多くなく、ラオス文字はだいたい読めるけれどもクメール文字はほとんど読めないというタイ語話者もいるのではないでしょうか(私もそうですが)。
クメール語は子音文字が連続した場合は後ろの文字が脚文字という形に変化する点と、子音文字の種類(A子音、O子音)によって母音の発音が異なる点が複雑に感じる要因だと思います。
例えば、言語を意味するភាសា(phiəsaa, ピアサー)という言葉には同じ母音ាが2回使われていますが、前者の発音はiəで後者はaː。一方、タイ語にはそういった変化は無いため、ภาษาの◌าはどちらもaːと発音されphaasǎa(パーサー)となります。
また、カンボジアでは看板などの書体で字形が大きく変わる文字があるのも特徴で、代表的な子音文字3つが以下(上下で同じ文字)。なんでこんな形に?と思いますが、下の書体(ムール体)は古い文字の影響が残っているとのこと。
これにコームタイ文字(Khom Thai, อักษรขอม)とタイ文字を加えてみたものが以下。上からクメール文字、クメール文字(ムール体)、コームタイ文字、タイ文字。
コームタイ(コムタイ)というのはかつてタイで使われていた文字で、コームはクマエ(カンボジア)が転じたもの。その名の通り、古いクメール文字を参考に造られているためクメール文字のムール体とそっくりです。コームタイの一覧は以下で見ることができます。
Khom Thai script – Wikipedia
Khom Thai Script
現代のタイではコームタイ文字はほとんど使用されなくなりましたが、サックヤン(サクヤン สักยันต์)と呼ばれる伝統的な刺青を彫る際の文字としては今でも使われています。
タイの街中でサクヤン風の刺青を入れている外国人を時々見かけます。ただ、コームタイを知らない人が彫ったのか字形が汚いことが多く、残念な出来栄えというものも目立ちますね。