久しぶりの「アジアの麺料理」。第7回目となる今回はタイ・バンコクで食べたクエチャップ・ユアン(ก๋วยจั๊บญวน)を紹介します。
モチモチとした細長い麺に具として豚肉、肉団子、ソーセージ(ムーヨー)、卵、しいたけなどが入った、タイ東北部でポピュラーな麺料理です。
食べた場所はバンコクのカオサン通り近くにあるクンデーン・クエチャップ・ユアン(คุณแดงก๋วยจั๊บญวน)。ウボンラチャターニー発祥のお店ですが、現在ではバンコクでクエチャップ・ユアンといったら真っ先に名前が挙がるほどの有名店になっています。
店内の様子。
使用する麺は米粉にタピオカ粉を混ぜて作られるのが特徴で、これによって独特のモチモチとした食感を生み出しています。米粉のみで作られるクイティアオ(ก๋วยเตี๋ยว)やフォー(phở)など他のライスヌードルとの大きな違いがここにあります。
タイには元々クエチャップ(クイチャップ)という麺料理があり、ユアン(ญวน)というのはタイ語でベトナムのことなので直訳すれば「ベトナム風クエチャップ」となります。
当然、元になった料理がベトナムにあるのですが、それがバンカン(Bánh canh)です。タピオカ麺としても知られているこの料理はベトナム南部から中部でよく見かけ、豚骨ベースのスープにタピオカ粉またはタピオカ粉と米粉をミックスして作られた麺を使用しています。
バンカン (photo by Rose Trinh)
タイ東北部は地理的にベトナムに近いこともあって昔からベトナム系の住民が多い土地でもあります。ベトナムからタイ東北部へ移り住んだ人たちがこのバンカンを広め、タイでそれ以前から存在していたクエチャップという名称を借用して「クエチャップ・ユアン」と呼ばれるようになったのではないかと推測していますが、どうでしょうか?
ウドンターニーなどタイ東北部の一部でカオピヤック(ข้าวเปียก)、あるいはラオスでカオピヤックセンなどと呼ばれるものも同系統で、製麺法による分類に従うと、これらはいずれも押しだし麺系列に分類することができます。
ついでに、クエチャップについても紹介します。
タイで見かける多くの麺料理と同様に、これも潮州華人が持ち込んだもので漢字で書くと「粿汁」。
潮州文化百科というサイトを見てみると、現地では労働者に好まれた食べ物で、安価でかつ栄養を採るために豚の内臓などを具に加えたのがはじまりとのこと。
タイではくるくると丸まったマカロニ程度の短い麺に、ハツ、レバー、小腸などの内臓系に加え、豚の血を固めたもの、豚の皮、豚肉、ゆで卵などの具を使うのが一般的。
タイのクエチャップ (photo by Jeff McNeill)
シンガポールでも同名のKway Chapという料理がありますが、こちらは具は別皿で提供されることも多いです。また、麺はタイのように丸まっていません。
シンガポールのクエチャップ (photo by eummo)
このように、国や地域によって少しずつアレンジされた麺料理を食べ比べてみるというのも東南アジアの楽しみの一つですね。
データ
料理名: クエチャップ・ユアン (Kway Chap Yuan)
場所: タイ・バンコクのプラアーティット通り
麺の原料: 米粉・タピオカ粉
麺の種類: 押しだし麺系列
具: 豚肉、ソーセージ(ムーヨー)、卵、しいたけ、葱など
店名: クンデーン・クエチャップ・ユアン(คุณแดงก๋วยจั๊บญวน)