外国人旅行者が多く訪れるタイの2大ビーチというとパタヤビーチとプーケットのパトンビーチが挙げられると思います。
ビーチロードがあり、それに平行して2本目、3本目の通りが走り、その辺りまでが観光客エリアというのも似ていますし、ナイトライフが充実している点やビーチがそれほど綺麗でないことなど結構共通点はあります。
ビーチを占拠していた業者が一掃され、すっきりとしたパトンビーチ。
一方で、この2つのビーチ周辺の景観を比べた際に建物の高さが全然違うことに気づくのではないでしょうか。
パタヤビーチ周辺には中高層のコンドミニアムやらホテルやらが目立ちますが、パトンビーチを見ると高層と呼べるのは老舗のロイヤルパラダイスホテルとアンダマンビーチスイート、さらにコンドミニアムのパトンタワーぐらい。
高層ビルのないパトンではひときわ目立つロイヤルパラダイスホテル。
こういっては失礼ですが、いずれもちょっと古ぼけた物件ばかりで、その他に10階を超えるような建物はほとんど見当たりません。
先日、パトンでベストウェスタンというホテルに泊まったのですが、そのホテルは7階建てでした。ホテル前の通りを歩いている時にふと、隣に建つプーケットヴィラというレジデンスも、さらにその隣に建つAPKリゾートというホテルも建物の高さが全く同じだということに気づきました。
プーケットヴィラ(Phuket Villa Patong Beach)も7階建て。
普通に考えれば何らかの規制があるんだろう、ということでプーケットの建築制限について調べてみると、プーケット島内では国立公園などを除いた建築可能な土地はゾーン1からゾーン8までに区分けされていて、各ゾーンごとに建築物の許容高さが細かく決められているとのこと。
もちろん用途別に建ぺい率制限などもありますが、とりあえず建物の高さだけに注目すると、
ゾーン1(海岸線から50メートル以内の土地): 最大6メートル
ゾーン2(海岸線から50メートル以上200メートル以内の土地): 最大12メートル
ゾーン3(海岸線から200メートル以上400メートル以内の土地): 最大16メートル
などとなっています。
ベストウェスタンホテルのある辺りは海岸線からは400メートル以上離れていて、ゾーニングに従うとゾーン8に当たります。このゾーンの高さ制限は23メートルということで、7~8階建てが限界。まさにぴったりです。それを知ってから周囲をよく見ると確かにこのあたりは7階建てや8階建ての建物だらけ。
ビーチ沿いのタウィーウォン通りだとほとんどはゾーン2に入るでしょうから4階建てが精一杯。昨年、通り沿いにオープンしたホリデイインエクスプレスもやはり4階建てです。
最初のほうで挙げたパトンエリアにある高層ホテル・コンドミニアムは下記のようにいずれも1980年~90年代台にかけて開業したものばかり。現在の規制が制定される以前の建築物なのでOK、ということなのだと思います。
ロイヤルパラダイスホテル(Royal Paradice Hotel) 25階建て 1989年開業
アンダマンビーチスイート (Andaman Beach Suites) 19階建て 1993年開業
パトンタワー (Patong Tower) 32階建て 1998年開業
これでプーケットに高い建物がほとんど無い理由が理解できました。
同様の建築規制が施行されているのはもちろんプーケットだけではなく、例えばサムイ島でも大部分のエリアが6メートルないしは12メートルまでに制限されているとのこと。一般に「サムイ島では椰子の木より高い建物は建てられない」などと言われますが、これもあながち間違っている表現ではありませんね。
Koh Samui Building Regulations (PDF)
自分が初めてパトンビーチを訪れたのは1990年代半ば。当時のロイヤルパラダイスは1階に併設されていたディスコはそこそこ人気があったものの、既にちょっと旬を過ぎていたという印象が残っているのですが、現在でもリノベーションされ特に団体旅行などでは人気のホテルとしてその存在感を保っているようです。
あの建物が見えてくるといよいよパトンだという感じで、ランドマーク的な存在であることは今でも全く変わっていないですが、それはプーケットの建築規制のおかげでもあるわけですね。