東西経済回廊を行く その3 デーンサワン~サワンナケート

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その1(フエ~ラオバオ)、その2(ラオバオ~デーンサワン)ときて、今回第3弾です。

サワンナケート行きのローカルバス

11時20分過ぎにデーンサワンのバスターミナルに到着。正午発のサワンナケート行きローカルバスになんとか間に合いました(時刻表)。

出発にはまだ30分以上あるため、バスターミナル脇に幾つかある経済飯屋のうちの一つに入り、空芯菜炒めとカイパローをご飯の上に載せたものを注文。長旅に備えペットボトル入りの水も買っておきます。ラオスの通貨キープをまだ持っていないので支払いはタイ・バーツで。1万キープが40バーツ計算でした。

これから乗る予定のバスをちらっと見ると、既に屋根の上にはかなりの荷物が積み込まれています。

サワンナケート行きのローカルバス

正面上部にはサワンナケート、サーイデーン(国境)との表記。国境とはデーンサワンのこと。下部左側はサワン(サワンナケートの略称)と書いてあります。

車内の様子

乗り遅れると大変なことになるので手短に食事を済ませ15分前に乗車。座席の下にも荷物が隙間なく置かれ、足は床に下ろすことができない状態。

反対に上を見ると所々天井の部材が剥がれかけています。あれだけの物を載せているので、天井を突き破って頭の上に落ちてこないかが心配。

車内の様子

車内に置かれている荷物は中身が確認できたものだけでも、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、建築用塗料、プロパンガスボンベ、魚の缶詰、食用油、調味料、食器用洗剤、野菜、果物などなど。日用品から食品まで多岐に及んでいます。

12時5分前にドライバーが乗り込みおもむろにエンジンをかけ、そのまま発車。ここでも意外と時間厳守というか、むしろ定刻より早く出発。この時点での乗客は10人程度。大型バスですが大部分のスペースを荷物に占拠されているため最大でも20人程度しか乗ることができません。

バスは表の道路に出るとすぐに停車。道路脇には巨大な袋を幾つも抱えたおばさんたちが集まってきています。たぶんこれも全部積むんだろうなと考えていたら、案の定そうでした。

さらに荷物を積み込む

おかげで、前方の視界がすっかり無くなり、自分のスーツケースもうず高く積まれた荷物のどこか下の方に入り込んで姿が見えなくなってしまいました。もうこうなると、荷物のついでに人を載せて運んでいると言ったほうが正確で、バスというよりはバス型貨物車とでも表現した方がぴったりする感じ。

ともあれ、12時10分過ぎに何とか再出発。

ベトナムからラオスに入っても急激に景色が変化するわけでもないのですが、それでも徐々にこれまでのベトナムとは違った風景が飛び込んできます(と言っても前が見えないので全て横の窓からの景色ですが・・・)。

まず建物がより質素になり、高床式の家が目立つようになります。

高床式の家

次いで、家の敷地の隅に置かれた小さな祠を目にするように。これはアミニズム(精霊信仰)の一種で、お隣タイでも一般的なもの。

ラオスの家の片隅に置かれた祠

10分ほど走って今度は給油のためストップ。なかなかすんなりとは進みません。自分の隣の席に、小さな女の子連れのお母さんが乗り込んできます。たまたま持っていたハイチュウを女の子にあげるとすごく気に入ったようで美味しそうに食べてくれました。

ラオスの女の子

年齢を訊ねると3歳とのこと。母親に頼まれ、彼女が大事そうに抱えていたゆでトウモロコシをドア近くのネジに引っかけてあげます。

ゆでトウモロコシ

バスが左右に揺れるたび、トウモロコシも左右にゆっくりと揺れる。

12時半頃になり、車掌が運賃を集めに来ます。サワンナケートまでは4万キープ(160バーツ)。

道路は綺麗に舗装され、快調に走行。ベトナムのように速度取り締まりもないためか、かなり飛ばしています。おそらく100km/h前後は出ていたのでは。

バスが走っているのはラオス国内では国道9号線と呼ばれている道路で、東西経済回廊がらみもあって日本による無償資金協力が重点的に行われている箇所。現在は一部区間を除きほぼ舗装が完了していますが、その多くが日本のODAの恩恵を受けているということになりますね。

また、昨年ラオス政府はこのラオバオ~サワンナケート間に鉄道を敷設することを発表し、マレーシア企業が受注。今年中に事業が開始されるとのことですが、計画通りいくのでしょうか?

12時40分、検問所があり一旦停止。制服を着たすらっとした男の係官がバスに乗り込んできて、一人一人のIDをチェック。それまで和やかだった車内の空気が一瞬張り詰めます。

自分もパスポートを提示。どこまで行くのかと英語で聞かれ、サワンナケートだというと、それで終了。彼が下りるとバス内はまた元ののんびりとした雰囲気に。

午後1時、比較的大きな川を渡ったかと思うとセポン(セーポン)に到着。

川を渡る

後で地図を見直してみると、メコン川の支流でバンヒエン川(邦亨河)というらしい。

セポンはデーンサワンより遥かに大きな町で、一通りの商店は揃っている様子。ここで数人の乗客が下り、また新たな乗客が乗り込んできます。

セポンのゲストハウス

セポン街中のゲストハウス。

セポン北部郊外にはラオス屈指の大鉱山があり、良質な銅を産出しています。以前は金も豊富に採れ、この鉱山からの納税額がラオス国内全体の歳入の2割を超えていたというのだから、まさに宝の山。現在は中国系企業が経営権を握っているようです。

セポンで小休止した後、バスは再び走り出します。エアコンなどは望むべきもないので、当然窓は開けっぱなし。普通に走っている分には風も入り込んできて気持ちが良いのですが、一旦、客や荷物を載せたり下ろしたりするためにブレーキをかけ、砂が剥き出しの路肩に停車すると状況は一変。もうもうと土煙が舞い上がり、それがバスの中にも大量に入り込んできます。

13時40分、ピン(Phin)という町を通過。

その後、14時近くになってウドムサイという村に入るころ急に道路状況が悪くなり、未舗装道路が続くように。

未舗装の道路が続く

至る所で大きな穴が開いていて、それを避けつつ、さらに対向車を気にしつつノロノロ運転で進むしかない状態。車内もこれまで以上にほこりっぽくなります。

未舗装の道路が続く

髪の毛は土埃を吸ってバサバサに、顔をウェットティッシュでちょっと拭うと茶色に染まっていきます。

荷卸しの作業

途中、例の大量の荷物を抱えたおばさん軍団が下車。

車内の様子

ようやく視界が開けた。

荷物の上に腰を掛けているのは車掌。彼は物静かで、非常に生真面目。仕事があるときは常にテキパキと動き、暇なときは時折物思いに耽るように遠くの景色をじっと眺めている様子が印象的でした。

悪路は時間にして約30分、距離にして7~8キロ続き、ようやく舗装のある道路にまで来たかと思ったらバスが急停車。

急停止するバス

運転手や車掌は後部のエンジン付近に集まり何やらごそごそやってます。客もぞろぞろと下りはじめたので、自分も草むらまで行ってトイレタイム。

ローカルバスのエンジン

件の人の良さそうな車掌に『エンジントラブルか?』と聞くと、「大丈夫」との返答。

ハードな道路状況が続いたのでエンジンを少し冷ますのと同時に休憩を兼ねて停止しただけのようでした。どこからともなく屋台のアイス売りまで登場。すごーく食べたかったのですが、朝から腹の調子がイマイチな上まだこの先長丁場なことを思いあきらめました。

15分ほど休み、再出発。ここから先は目に見えて道路状況が良くなり、タイ国内の幹線道路とも遜色ないような状態。当然バスもびゅんびゅん飛ばします。

道中目立つ商業施設と言えば、雑貨屋兼食堂とガソリンスタンドぐらい。

旅の疲れの影響もあってこの辺りからウトウトと。気づくと時刻は16時30分。既にセノ(Xeno)という町に到着していました。

セノに到着

ここで大量の食料品を下ろします。恰幅のいい商店主だかレストランオーナーだがか来ていて従業員や車掌に色々指示を出しています。

荷物を下ろす

荷卸し作業中。

屋根の上の荷物を下ろす
屋根の上に積み込まれていたのはほとんどがベトナム製のインスタントラーメン。

地図を見るとわかるように、セノという町はタイの国境から30~40km程度しか離れていません。

わざわざベトナムから持ってくる必要があるのかと思い、従業員に、『ここからだったらタイの方がよっぽど近いのに、なんでベトナムで買ってくるの?』と聞くと、タイで買うと段ボール一箱が約150バーツするのに対し、ベトナムで買うと80バーツ程度で済むのだそう。

「でも、タイのママー(インスタントラーメンの有名ブランド)の方が、ずっと美味しいんだけどね」と笑いながら答えてくれました。

目的地のサワンナケートまでは残り30数キロ。予定通り5時頃には着くなと考えていると、荷降ろし作業が一向に終わりません。なぜそんなに時間が掛かっているのか全くわからないのですが、途中雨が降り出し一時作業が中断するなどして、結局何と1時間もここで足止め。

屋根の上の荷をすっかり降ろし、身軽になったバスがようやく出発した頃には時計の針は5時半を回っていました。

サワンナケート・バスターミナル

サワンナケートのバスターミナルに着いたのは午後6時。デーンサワンからの所要時間はちょうど6時間。さすがにクタクタ、着ている服は汗・ほこりまみれ、黒だったはずのスーツケースも全体が茶色にコーティングされています。

トゥクトゥクでホテルへ

夕闇が迫るなか、トゥクトゥクに乗ってホテルまで連れて行ってもらいました。

ベトナムのフエを早朝6時40分に出発し、サワンナケートのホテルに着いたのが午後6時10分。タクシー、ミニバス、徒歩、バイクタクシー、大型バス、トゥクトゥクと乗り継いだ、合計11時間半にわたるこの日の大移動はここで終了。運賃は全部で約2千円でした。

ホテルの部屋に入り荷をほどき、すぐにシャワーで汗と汚れを流した後、バスタブに湯を張りじっくり肩までつかります。この時は一瞬意識がブラックアウトするかと思ったくらい気持ちがよかったですね。

次回その4は今回の旅の最終回。ラオスからタイへの移動、サワンナケート~ムクダハーン編をお届けします。