その1(フエ~ラオバオ)、その2(ラオバオ~デーンサワン)、その3(デーンサワン~サワンナケート)ときて今回が第4弾。最終回です。
今日はラオスのサワンナケートからメコン川を越えてタイ側の町ムクダハーンに向かいます。
通常であれば、ここは両都市のバスターミナルを結ぶ国際バスに乗ってしまうのが一番お手軽且つポピュラーな方法。
でも、物事はそう簡単には運びません。
自分はムクダハーンに着いた後、バンコクまで飛行機で行く予定なのですが、ムクダハーンには空港が無く100kmほど離れたナコーンパノム空港発の便を予約してあります。
正午のフライトということで午前11時頃にはナコーンパノム空港に着いていたいところ。
前日、サワンナケートのバスターミナルで確認すると、ムクダハーン行き国際バスの始発は8時15分と結構遅め。国境での手続きなども考えると所要時間は1時間程度、ムクダハーンに着くのは午前9時過ぎということになります。
サワンナケート発ムクダハーン行きの国際バス時刻表(2015年7月時点)
ムクダハーンからナコーンパノムへ行くバスのスケジュールは事前には把握できなかったのですが、距離的に1時間半程度と予想。そうなると、すぐにバスがあったとしても午前11時のタイムリミットにギリギリという感じになってしまいます。
さらに地図で確認すると、ナコーンパノムのバスターミナルから空港までは15km以上距離があり、迷った末に国際バスはあきらめ、早めに出発しトゥクトゥクなどを乗り継ぎ自力で移動することに決定。
翌朝、荷物をまとめ宿泊していたアヴァロンレジデンス(Avalon Residence)の部屋を出ます。時刻は午前6時20分。ここを取ったのは口コミでの評判が良かったことに加え、バスターミナルに非常に近かったため。詳細は後日宿泊記として紹介します。
1階に降りるとフロントはもぬけの殻状態。10分ほど大声で叫んだり、机を叩いたりしますが誰も出てきません。宿賃は支払い済みですし、追加で掛かる費用もないので、紙切れに一言書置きをして鍵だけ机の中に置いて外へ出ます。
空を見上げると、運悪く今日も雨模様。
まずはラオスとタイの国境である友好橋まで行ってくれるトゥクトゥクを探すことに。幸いすぐに見つかり、料金は交渉の末2万キープ(約300円)で成立。この時振り返るとようやくホテルにスタッフの姿が。一宿の礼を簡単に述べ、急いで出発します。
6時45分、友好橋手前のチェックポイントに到着。
行列もなく、ラオス出国手続きはあっという間に完了。
さて、これからメコン川に架かる橋を渡ってタイ側のチェックポイントに向かいます。
タイ・ラオス第2友好橋の建設に対して、日本の援助に感謝を表すプレート。
当初はタクシーやトゥクトゥクがいるだろうと気軽に考えていたのですが、いざ来てみると、早い時間のせいなのか、あるいはこれが普通なのかわかりませんが、周囲を見渡してもそういった車は1台も見当たりません。
どうしようか悩んでいると、その様子を察したのであろう派手なカラーリングを施した一台のミニバンが自分のすぐ脇に停車。ボディを見るとサワンベガス(SAVAN VEGAS)と書いてあり、サワンナケートにあるカジノの送迎バスであることがわかります。
やたらと派手なサワンベガスのミニバン(タイ側に入ってから撮影)。
運転手が声をかけてきて「タイ側まで乗せてくよ」。「いくら?」と尋ねると、100バーツ(約350円)とのこと。距離を考えると相当に高いのですが、他に選択肢もなく、さっさと乗り込みます。ドライバーにとっては絶好の小遣い稼ぎでしょう。
中は小金持ちそうなタイ人でいっぱい。
前夜カジノでだいぶやられたのか、カラフルな車体とは裏腹に車内はずいぶん暗い雰囲気。全員押し黙ったままなので、こちらも無言です。
7時10分、タイ側のチェックポイントに到着。
最初この列に並んでいたのですが、よく見るとタイ人用と書かれています。他はひと気が無くここでも大丈夫だろうと思っていたら結構厳格でダメとのこと。隣の外国人用ブースで手続きをして無事タイに入国。
いよいよ最後の移動です。
ここからムクダハーンのバスターミナルまで行けば、「東西経済回廊」としての今回の旅は終了。ただ、これがなかなか見つかりません。これからラオス側に向かうという自家用車は次々と通るのですが、トゥクトゥクやらタクシーは全く来ません。
かといって、雨も結構強くなっているため、このままスーツケースを引きずって歩いてムクダハーンの街中まで出る気にもならず、もうしばらくこの場で待つことにします。
ここで事前に用意してきたタイのプリペイドSIMカードに入れ替えることに。しかし、最近規則が厳しくなったようで、利用するためにはまずキャリアのショップに行って個人情報を登録しないと使えない仕様に変わっていました。残念。
ただ、このイミグレ周辺はタイ政府が主導するフリーWi-Fi、ICT Free Wi-fiが提供されていて、インターネットを使うことが可能だったのは唯一の救い。
結局20分以上待って、ようやく客を乗せてきたトゥクトゥク1台を発見。この時点で時刻は7時40分を過ぎています。バスターミナルまでの運賃は言い値で200バーツ。多分これも高いのでしょうが、これ以上待つのは嫌なのですぐに妥協します。
珍しくドライバーは女性。
雨の中を疾走。
8時ちょっと過ぎ、ムクダハーンのバスターミナルに到着。結局、サワンナケートの宿を出発してからここまで1時間20分かかりました。
ムクダハーン・バスターミナル。
「東西経済回廊を行く フエ~ムクダハーン編」、約440kmの旅はこれをもって無事終了。
この辺りのトゥクトゥクはバンコクのそれとは違い、バイクに荷台をくっつけたタイプ。
アセアンでは今年12月にいよいよAEC(ASEAN経済共同体)が誕生する予定で、この新しい経済圏のヒト・モノ・カネの動きを担う大動脈のひとつと目されているのがこの道路です。
但し今回実際に行ってみて、現状では東西経済回廊(East-West Economic Corridor)という名称は現地では知名度は低く、またその経済的な期待度もそれほどではないという印象を受けました。恩恵の大きい日本などの一部経済界とは結構温度差がある気がします。
今回どこが印象に残ったかと聞かれれば、間違いなく、最も辛かったデーンサワン~サワンナケート間のローカルバスですね。
数週間が経過した今でも、乗り合わせ会話を交わした乗客たちや車掌の顔立ち、あるいは埃っぽい空気やバスに吊るしたトウモロコシなどの光景をありありと思い出します。そこにあったのは紛れもなく地に足の着いたリアルで濃密な空間でした。
東西経済回廊自体はミャンマーまで続いています。いつになるかはわかりませんが、ムクダハーンから先の残りの区間も今後行ってみるつもりです。その時まで、一旦このシリーズは休止ということにしておきます。