タイ東北部のヤソートーン県にできた、世界最大級のヒキガエル像を見物に行ってきました。
一体なんでこんな奇妙な物を造ってしまったかというと、イサーン(タイ東北部)やラオスで昔から語り継がれるパヤー・カン・カーク(พญาคันคาก)またはパヤー・カーン・コック(พญาคางคก)と呼ばれる伝説が基になっています。
伝説を知ればその土地をもっと楽しむことができるはず、ということでまずはどんな言い伝えなのかざっと説明を。
パヤー・カン・カーク物語
昔々、この地方に存在したというインタパット国での出来事。
ある夜、この国のお妃であるシーダー妃が奇妙な夢を見たかと思うと子供を身籠ります。しばらくして生まれてきたのはカエルの顔をした赤ん坊。心配した王と妃が占い師に診てもらうと「この王子は将来この地に必ず繁栄をもたらすであろう」とのお告げでほっと一安心。
パヤー・カン・カーク(カエル王)と名付けられた子供は占い師の言葉通りその後立派に成長し、土地の人々や動物たちからも尊敬を集める存在に。
これに嫉妬し面白く思わなかったのが天空に住んで空を司る神、パヤー・テーン(พญาแถน)。人間たちを困らせてやろうとナーガ(蛇神)を操り雨を一切降らせないようにしたため地上はたちまち旱魃。人々は飢饉で苦しむことになります。
パヤー・カン・カークはパヤー・テーンに使者を送り、雨を降らすよう交渉するも決裂。この場に及んでついに両者は刃を交えることに。
激しい決戦の結果、最終的にはパヤー・カン・カーク軍が勝利。「地上からロケット花火を打った時は我々が雨を必要としている合図じゃ。必ず雨を降らすようにな」という約束をパヤー・テーンに結ばせます。
その後、大地が乾く乾季の終り頃になるとナーガの形を模したロケット花火を打ち上げるのがこの地での習慣となり、これが今ヤソートーンで有名なロケット祭り(ブン・バンファイ)の由来になったとさ。めでたし、めでたし。
伝説が理解できたところでいざ本題へ。
タイ人がSNSで写真をアップしているの見て以来、あまりに変わった像なのでぜひ実際に訪れてみたいと思い、今回わざわざレンタカーを走らせて一路ヤソートーンへやってきました。場所は以下の地図を参考に。
車を駐車場に停め、いざ巨大カエル像の元へ。周囲は公園のようになっているものの未だ整備中。将来的には大規模な複合施設を造る計画のようです。
近づくとまずは沢山の女性踊り子たちの像が。その後ろには名物のロケット花火の山車。そして左手奥に本命のカエル像。
横に回ってみると、パヤー・カン・カーク@ヤソートーンと書かれた絶好の撮影ポイントも。
カエル像の内部は博物館になっています(ピピタパン・パヤー・カン・カーク)。
入口に掲げられていた案内を読むと開館時間は以下の通り。
平日: 9時~12時及び15時~18時 (火曜は休館日)
土・日・祝日: 9時~12時及び13時~19時
既に時刻は午前9時15分を過ぎていたのになぜか鍵がかかっていて入れません。近くにいた写真屋さん(観光地によくいる有料で写真を撮影してくれる人)にタイ語で尋ねると「たぶん今掃除中で、もう少ししたら開くんじゃないかな。よくわかんないけど」とあいまいな返答。
これを目当てにここまで来たのに上に登らずに帰るわけにもいきません。仕方なくぼけっと座って待っていると、9時半を過ぎたころようやく掃除のおばちゃんがのんびり下りてきて正面玄関の鍵を開けてくれました。靴を脱ぎ、置いてあるビーチサンダルに履き替えいざカエルの腹の中に突入。
まだソフトオープン状態のため、今のところ入館料のようなものは取られず無料。階段以外に中央部分にはエレベーターも設置されています。
上層階は展示室で、県の歴史や観光スポットなどの情報・地図が掲示されている程度。特に興味を惹かれるものはありません。
4階までエレベーターで行き、さらに階段で1フロア登るとそこが最上階(5階に相当)。カエルの口の中が展望台です。
展望台から左手(北方向)に目をやると、先ほどの物語にも登場したナーガ(パヤー・ナーク)の巨大像も見えます。但し、カエル像に比べると今一つ地味な存在。ナーガ像自体はタイであればどこでも見られるという事もあってか、こちらはあまり人気がないようでした。
目の前に広がる湖みたいなものはクローン・チアムと呼ばれる水路。最終的にはムーン川やメコン川に通じています。
南方向、国道23号線の向こう側にはパヤー・テーン公園というのも造られているとのことで、なかなかユーモアのセンスも感じます。
ただ、この展望台に上ると当然カエル像自体は見えないわけで、景色はごく普通のタイの田舎の風景。やっぱり外から見るほうがいいですね。
ナーガ像の長さは100メートル近くあり、こちらも内部に入ることができます。現状はとりあえず何か置いておけという感じで今後の整備が待たれる段階です。
伝説はさておいて、現実的なことを言ってしまえばこれらは町興し事業として造ったのでしょうね。ロケット祭りは年1回だけですし、それ以外に普段から何か県を代表する場所やアイコンとなるようなものが欲しかったということだと思います。
タイでも流行のインスタ映えするのは間違いなく、実際まだ正式に完成していない現段階でもお昼近くになるとタイ人観光客が次々とやってきて我先にと写真を撮っていました。将来、観光名所になるのは間違いないでしょう。
この巨大カエル像に直接行くことのできる公共交通機関は今のところないため、車・レンタカー以外だとアクセスが不便な点が一番の問題。ただ、ウボンラチャターニーとコーンケーンを結ぶ街道(国道23号線)を通るバスは豊富に走っているので、それらに乗ってヤソートーン中心部で下車。あとはトゥクトゥクなどをチャーターする方法が一般的だと思います。
また、バンコクからだとノックエア(Nok Air)が提供しているヤソートーンまでのジョイントチケット(航空券+ミニバス)を購入するのも便利な方法。ジェーンジョップティット通りにあるバスターミナルまで連れて行ってもらえるので、そこから巨大カエル像まではおよそ4kmほどです。
日本だったらこういう場所ではカエル饅頭とかカエルクッキーとか売っているのでしょうが、ここでは今のところそういうものは無し。ただ敷地内にカエルの置物はたくさんありました。
県内にはこの他にも古い町並みの残るバーン・シン・ターをはじめ、三角枕の産地バーン・シーターン、木造建築の教会など幾つか見どころも。トゥクトゥクやバイクタクシーと交渉してぜひ訪れてみて下さい。
今回自分は隣のローイエット県に泊まったのですが、ヤソートーンにも幾つかオンライン予約のできるホテルはあります。宿泊を考えている方は以下よりどうぞ。