バンコクのスワンナプーム国際空港を利用した方であれば、ターミナル内に巨大な鬼の像が立っているのを一度は目にしているのではないでしょうか?
開港当初は到着フロアに置かれていたのですが、現在は出発フロアのチェックインカウンター周辺に点在。そのため、これを見ると「ああ、これで今回もバンコクとはお別れか」という思いが湧いてきます。
ところでこの巨大像、空港内に全部で何体あるか知っていますか?
答えは12体。
鬼はタイではヤック(ยักษ์)と呼ばれ、これらはバンコクのワット・プラケオ(エメラルド寺院)にあるヤック像を模したもの。元々は古代インドから伝わった鬼神ですが、タイでは仏教に取り入れられる際に守護神としての性格が強くなり、ワット・プラケオでは門番として善人を悪から守る役目を果たしています。
12体はそれぞれ別の種類で、全てタイの叙事詩ラーマキエンに登場。ちゃんと名前も付いていて、よく見るとそれぞれ色や表情なども違っています。今回はその名称や特徴を写真と共に簡単に紹介していこうと思います(順番は、ターミナル入口を背にして左から右へ)。
トッサキーリーワン(ทศคีรีวัน)
トッサカンと象の間に生まれた子供。故に象の鼻を持つ。顔と体は緑色。下で紹介しているトッサキーリートンは双子でこちらが兄。チェックインカウンターD付近。
トッサキーリートン(ทศคีรีธร)
双子の弟。上と同じく象の鼻を持ち様相もほぼ同じだが、顔と体が赤茶色のため判別可能。チェックインカウンターE付近。
サハッサデーチャ(สหัสเดชะ)
顔と体は白。多面多臂で千の顔と二千の腕を持つとされる。この像では腕は2本で表現されているものの頭上面が描かれている。チェックインカウンターF付近。
アッサカンマーラー(อัศกรรณมารา)
体と顔は濃い紫色。7つの顔を持つとされ、この像でもやはり本面の上に小さな頭上面があるのが確認できる。チェックインカウンターG付近。
ウィルンチャムバン(วิรุณจำบัง)
一般に顔と体は灰色とされるが、ここではワット・プラケオの像に合わせ青色で表現されている。チェックインカウンターH付近。
トッサカン(ทศกัณฐ์)
ラーマキエンにおけるランカー国の王。元となったインドのラーマーヤナではラーヴァナとして知られる。顔と体は緑色で10の顔と20の腕を持つ。チェックインカウンターJ付近。
マンコーンカン(มังกรกัณฐ์)
顔と体は緑色。頭の上にナーガ(蛇)が載っているのが特徴。チェックインカウンターM付近。
マイヤラープ(ไมยราพ)
顔と体は薄紫色。ピンクに似た色合いがどことなく可愛らしいが性別は他のヤックと同様に男。チェックインカウンターN付近。
チャカワン(จักรวรรดิ)
顔と体は白色。4面8臂とされ、この像でも本面の上に小さな3面が描かれている。チェックインカウンターP付近。
ウィルンホック(วิรุฬหก)
顔と体は濃い青色。マンコーンカンと同様に頭上にナーガを戴く。チェックインカウンターQ付近。
イントラチット(อินทรชิต)
顔と体は緑色。トッサカンとモントー(マンドーダリー)との間の子。インドラジット。チェックインカウンターR付近。
スリヤーポップ(สุริยาภพ)
顔・体共に鮮やかな赤色で、日本でいうところのまさに赤鬼。チェックインカウンターS付近。
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全てサンスクリット語由来の言葉なので発音が非常に特殊です。タイ人でも全ての名前を正確に書ける人は多くはないのでは。なお、ヤックは日本語にも取り入れられ、夜叉(やしゃ)という単語になっています(個人的には「ヤクザ」というのも同源だと思っているのですが、これは残念ながらあまり支持されていないようです)。
善人を悪から守ってくれるのですから、きっとこのスワンナプーム空港のヤック達は旅行者を守護してくれるはず。バンコクを発つ前に、旅の安全と再びタイに戻ってこられることを祈願してみてはいかがでしょうか?