ベトナムの影響が色濃く残るタイ東北部の街、ナコンパノム

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今年4月、タイ東北部の国境の街ナコンパノム(ナコーンパノム)を訪れました。

この街はメコン川沿いに位置し、対岸はラオスのターケーク。同じタイ東北部のノーンカーイやムクダハーンなどと共にベトナム系移民の多い街として知られていて、今でもベトナム由来の文化や伝統が色濃く残っています。

メコン川。対岸はラオスのターケーク。
メコン川。対岸はラオスのターケーク。

中心部のメコン川沿いや大通りは電線・電柱の地中化が進んでいてすっきりとした景観が印象的。

ナコーンパノム中心部
ナコーンパノム中心部


ランドマークの一つである時計台はナコンパノムに住んでいたベトナム移民たちの一部が故郷に帰ることを記念して建てられたものです。

時計塔
時計塔
việt kiềuの文字が
việt kiềuの文字が

ターケークとは第3タイ・ラオス友好橋で結ばれていて外国人でも簡単に国境越えができますが、地元タイ人とラオス人は今でも船を使って行き来することも可能。河岸にイミグレの建物があります。

船着場
船着場
左の建物がイミグレ
左の建物がイミグレ

タイのベトナム系移民は2つのグループに大別され、19世紀にキリスト教迫害などにより国を追われた人々はユアン・カオ(Old Vietnamese)と呼称。一方、1946年のインドシナ戦争以降に移住してきた人たちはユアン・マイ(New Vietnamese)と呼ばれています。

中心部北側のノーンセーン地区には1860年以降にベトナムから移り住んだカトリック教徒たちの末裔たちが住むエリアがあり、中心部にはこの地区のシンボルでもある立派な教会が。

セント・アンナ・ノーンセーン教会
セント・アンナ・ノーンセーン教会

周辺には一見するとタイの他の街と同じようなごく普通の民家が建ち並んでいますが、よく見れば家々の軒先や壁にはキリストの象徴である星形のオブジェや飾りが掲げられていてキリスト教徒が住むエリアだということがわかります。

至る所に星形のオブジェ・飾りが
至る所に星形のオブジェ・飾りが

地図で確認すると理解しやすいですが、ナコンパノム周辺に暮らすベトナム系移民はハティン省やゲアン省(ヴィンなど)出身者が多いのが特徴。両省ともにキリスト教徒の多い地域として知られていて、省内の各所には今でも教会が多数存在しています。

ラオスのターケークも教会が多い街で、このルートはベトナム系キリスト教徒たちの移住の軌跡とも言えます。

ベトナムからの移民の経路
ベトナムからの移民の経路
ターケークの街並み
ターケークの街並み

ナコンパノムのバスターミナルからはターケークへの国際バスも1日4本出ています。所要時間は出入国手続きを含めて1時間30分ほど。料金は80バーツ。

ターケークへの国際バス
ターケークへの国際バス

ナコンパノムからラオスを経由してベトナム国境までもわずか150kmほど。タイ・ラオス第3友好橋を渡ってからわずか3時間でベトナムという近さです。

郊外にはバーン・ナーチョークという集落があり、ここもベトナム系移民の多い地域。住民の8割以上がベトナム系とのことで1928年7月~1929年末までタイに滞在していたホー・チ・ミンが一時暮らしていた場所としても知られています。

再現された家も見ることができ、このあたりではベトナムと同様にホーおじさん(ルン・ホー)と呼ばれ親しまれていました。

ホーおじさんの家
ホーおじさんの家

タイでの動向についてはTHẦU CHÍN Ở XIÊM(Ho Chi Minh in Siam)という作品が詳しく、それによると、イタリア・ナポリからの船でバンコクに着いたホー・チ・ミンは、まずは鉄道で北部のピチットに向かい、その後、身を隠しながらウドンターニー、サコーンナコン、ナコンパノムと移動していった様子が描かれています。

タイ人に言わせるとナコンパノムはムアン・スローライフ(スローライフな街)とのこと。中心部では自転車に乗った人をよく見かけます。

メコン川沿いの遊歩道
メコン川沿いの遊歩道

メコン川沿いに本格的な自転車レーンが整備されていることもあってか、サイクルウェアを着てツーリングをしているグループがいたり、朝になれば地元のおばちゃんたちが自転車に乗って市場に買い物に来ていたりと、タイでこれほどまでに自転車が身近な街も珍しいです。泊まったホテルでも自転車の無料貸し出しを行っていました。

自転車レーン
自転車レーン

ナコンパノム生鮮市場にはパークモー・ユアン(当地では単にパークモーと呼称)、ムーヨー(ベトナムハム)などタイでよく見かけるベトナム系料理・食材に加え、ナコンパノムならではの珍しいものも幾つかありました。

タイでカオソーイ(ข้าวซอย)と言えばチェンマイなど北タイで有名な麺料理ですが、ナコンパノムでカオソーイ(ข้าวโซย)と言えばご飯料理。こっちのソーイはベトナム語のxôiが語源で「おこわ」のこと。ベトナム風カオニャオといったところです。

カオソーイはトウモロコシ、緑豆、パンダンなど混ぜるものや使う米の種類によって色が異なり、しょっぱいものや甘いものなど味のバリエーションも豊富。最後にきな粉やココナッツフレークをまぶして食べるのが一般的。

カオソーイ屋台
カオソーイ屋台
これで10バーツ
これで10バーツ
ムーヨーと共に
ムーヨーと共に

ちなみに、タイ東北部でポピュラーなムーヨーもタイ語のムー(หมู)とベトナム語のヨー(giò)からなる造語です。発祥のベトナムではムーヨーはgiò lụa(ヨールアまたはゾールア)と呼ばれています。 

タイ風にアレンジされたブンモック(Bún mọc)も。

ブンモック屋台
ブンモック屋台

本場はシンプルなクリアスープですが、ここのはタイらしく辛みが加えられていました。

ラオスと同様にカオプンという呼び方も
ラオスと同様にカオプンという呼び方も

アクセス
飛行機またはバスでのアクセスが一般的。

空路の場合、郊外にナコンパノム空港がありLCCのタイ・エアアジアがバンコクからのフライトを運航。現在は1日3往復。料金は国内線としては高めのことが多く、特に週末や連休などと重なると満席となることもしばしば。

その場合、ナコンパノムから100kmほど離れたお隣の県サコーンナコン空港を利用するのも一つの手です。今回私もバンコクへの帰路に利用しましたが、こちらも現在はタイ・エアアジアとノックエアが合わせて3往復しているだけなので早めの予約をお勧めします。