なぜか日本人には人気がないタイの麺料理『カノムチーン』

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タイの麺料理と聞いて何を思い浮かべますか?たいていの人はクイッティアオ、バミー、パッタイ、カオソーイとかまあこのあたりではないでしょうか?

でも、タイ人がもっとずっと昔から日常的に食してきて地域を問わず馴染みのある麺って実はカノムチーン(ขนมจีน)なんです。

カノムチーン・ナムヤーカティ
カノムチーン・ナムヤーカティ

カノムチーンは米粉を原料とした押し出し式発酵麺で、製麺方法はまず米を水に漬け、かるく発酵。その後、米粉を水に溶いてドロドロにしたものを小孔から押しだし、湯にくぐらせることで線状に成型しています。

その名称を含めモン族由来ともよく言われるのですが、中国・雲南やベトナム北部などで暮らすタイ系諸族も同種の麺を同じ製麺方法で自ら作り食べていることからも、かつて雲南周辺に居住していたタイ族が陸路で東南アジアに南下する際に持ち込んだものと考える方がより自然だと思います。



雲南のタイ族の米線(ミーシェン)

ベトナムのタイー族(Tày)のブン(bún)

上記以外にも、同種の押し出し式発酵麺はラオスのカオプン(ເຂົ້າ​ປຸ້ນ)、カンボジアのノムバンチョック(នំបញ្ចុក)、ミャンマーのモヒンガー(မုန့်ဟင်းခါး)など東南アジア大陸部に広く分布。

東南アジアの麵 | 石毛直道食文化アーカイブス| 味の素食の文化センター

同じ米粉麺のクイッティアオは華人が持ち込んだ歴史の浅い外来の麺のためタイの家庭で作るようなことはしませんが、カノムチーンは祭りや儀式などの際に村人たちが総出で製麺を行ったりというようにタイ族の伝統的な暮らしに深く根ざした麺料理だということができます。

ただこの麺料理、正直日本人には全然人気がありません。

試しにブログやYoutubeを検索してみても、クイッティアオやカオソーイを紹介している記事・動画はいくらでも見つかるのに、カノムチーンを取り上げている日本人はほとんどいません。たまに見かけても海南系華人が持ち込んだ別料理のカノムチーン・ハイラム(海南粉)だったりという感じです。

個人的には、カノムチーンはもやしやハーブ類を少しずつ足しながら食べ進んでいくと絶妙のハーモニーが味わえて大好きな麺料理のひとつです。