タイ国内よりも海外で人気の高いタイ料理、プララームロンソン

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タイにプララームロンソン(พระรามลงสรง, 沐浴するラーマ)という一風変わった名前の料理があります。

材料は茹でた豚肉とパックブン(空心菜)。これらをご飯の上に乗せサテソースをかければ出来上がり。好みで辛みのあるナムプリックパオを混ぜながら食べれば味に深みが増します。潮州系移民がタイに持ち込んだ料理の一つで、漢字で書けば「沙茶飯」。

プララームロンソン
プララームロンソン

タイ語名の由来は緑色のパックブンをラーマキエンの主人公ラーマ(ヴィシュヌの化身ということで緑色で描かれる)に見立て、それがサテソースに浮かぶ様を沐浴と称したという説が有力ですが、はっきりとはわかっていません。

現在のタイではこのプララームロンソンを出す店は非常に少なくなり、地元タイ人でも今まで一度も食べたことが無いという人も多いのですが、なぜか欧米ではタイ語の料理名を直訳したSwimming Rama(スイミングラマ)という名でポピュラーな存在。

試しに、Swimming RamaでGoogle検索してみれば世界各地のレストランが見つかりますし、Youtubeにはそのレシピが多数アップされていて、代表的なタイ料理の一つとして紹介されているケースもしばしばあります。

なぜここまで人気になったのか、一つには使用する材料が入手しやすく作り方が至ってシンプル。またサテソース(ピーナッツソース)自体が欧米人には受け入れやすかったということもあるかもしれません。

サテと言えばインドネシア発祥の串焼き料理ですが、ピーナッツを主原料とするサテソースは華人によってインドネシアやマレーシアから中国に持ち込まれ、華南でも一般的な調味料。中国にはサテソースを用いる麺料理も幾つかあり、潮州の「沙茶粿」や福建や広東の「沙茶面(沙茶麵)」が代表的です。

タイにも細い米粉麺であるセンミーにサテソースをかける料理がありこれは現地ではプララックロンソン(พระลักษณ์ลงสรง、直訳すれば「沐浴するラクシュマナ」)あるいはセンミー・プララームロンソンと呼ばれています。

プララックロンソン
プララックロンソン

潮州人の多いヤワラーのチャルームブリー交差点一帯にはかつてはプララームロンソンを出す店が何店舗も並んでいたとのこと。

インドネシアの華人がサテソースを中国に持ち帰り、潮州で沙茶粿や沙茶飯が誕生。その後、それらはタイに持ち込まれプララームロンソンやプララックロンソンという奇妙な名前の料理に。そして時を経て、タイでは珍しい存在になったものの欧米ではスイミングラマという名前の人気タイ料理メニューに。こうしてみると、ずいぶんと変わった変遷を経たタイ料理と言えますね。

なお、一部ではこの料理を「王宮料理」と紹介しているサイト・ブログがありますが、全くの間違いで上述のように潮州華人がタイに持ち込んだ極々庶民的な「ぶっかけ飯」です。

シンガポールにも麺バージョンがあり、当地ではサテ・ビーフン(Satay Bee Hoon, 沙嗲米粉)と呼ばれ親しまれています。

参照
รู้จักอาหารที่เรียกว่า พระรามลงสรง กันไหมครับ? | Museum Thailand
“ซาแต๊ปึ่ง” ถึง “ข้าวพระรามลงสรง” และความทรงจำจาก ม.ร.ว.ถนัดศรี สมัยเป็นนร.ขาสั้น | ศิลปวัฒนธรรม
ข้าวพระรามลงสรง – ซาแต๊ปึ่ง อดีตสำรับกับข้าว ของชาวแต้จิ๋ว | เทคโนโลยีชาวบ้าน